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過去ログ:タクシードライバー2<at 2000 12/11 10:15>

12月10日AM0時過ぎ。その車はきた。呼んでから30分以上は経っていた。
友人とと私はすかさずタクシーに乗り込み、見送ってくれた人に手を振った途端タクシーは走り出した。
中では静かなジャズが流れている。

クイーンズのプライベートハウスの家々を通り過ぎる。どの家もライティングにこだわりを見せていて、ソリとサンタが家の上にのっているものまでアル。ライティングを堪能しながらタクシーは真夜中の道路をスムーズに走り抜け高速道路へとはいった。

マンハッタンを沿うように走る高速道路からマンハッタンは土曜日だからだろうか、真夜中なのに消して消えることのない灯りをともしている。「スカイスクレイパー」エンパイアステートビルのライティングも尖塔が緑色のクリスマスイルミネーションへと変わっている。

高速道路を降り、ブルックリンを南東に走り抜けるフラットブッシュアベニューへと移る。1時を過ぎたのにも関わらず歩いている人を何人か見かける。ブルックリンでは老舗に入るであろう「カフェジュニア」もコウコウと灯りがついていてカップルが楽しそうにデートをしているのが見える。「眠らない街」はマンハッタンだけでなく、ブルックリンでも健在だ。そしてこの眠らない街を毎晩駆け抜けるのがタクシードライバーだ。

彼の名はエディ。頬から顎にかけた髭とニットの帽子で寒さをしのいでいる。
PM6:00~AM6:00が彼の仕事時間だ。この前の休みは木曜日。前の日は
クリスマス休暇ということで6:00~3:00で早く仕事を終えている。

偶然にも先に降ろした私の友人の家の隣の歯医者に彼の妹が働いていて、そこから彼とすこし話す機会を得た。その友人を降ろした後、タクシーは私の家に向かうために、フラットブッシュアベニューを東へ進んだ。

彼も静かなのがイヤだったのだろうか。ポツリポツリと私に話し掛けてきた。
どこで発音を習ったのかと。あたしは自分のことを説明し、「へんでしょ~英語。毎日へこむのヨねぇ。」というと彼はフフッと笑った。その彼の物腰の柔らかさと軽くないノリがイエローキャブの普通のドライバーとは少々違う雰囲気を出していた。

仕事についた理由を聞くと「うーん、長いドラマなんだよ」といいつつも、「若いときにはちゃめちゃやってさ。オフィスでは働けなかったんだ。外の方が好きだったし。それでタクシードライバーになった。以上終わり。」なんていう簡単な答えしか言わず。だが突っ込んだらまた静かに笑い、自分のことを話し始めた。

高校生の時に中退したんだ。いろんなことをしでかしてね。その後7年半刑務所にはいっていたんだ。ムショにはいっていたから仕事を得られなかったっていうのもあるんだけど、それ以上に、人とあんまりうまくコミュニケーションをとれないんだよ。それがわかったのが30歳の時だな。それにオフィスで働いているやつっていうのも好きじゃないし。この仕事についたのが40歳の時、1993年だ。これが・・・・一番長い仕事だなぁ。

ムショという言葉を聞いた途端、ちょっとたじろいでしまったが、決して彼は暴力的な人間には見えなかった。もしかしたら、年月が彼を変えたのかも知れない。ムショの生活を聞こうなんていうことはできなかった。もちろん私の家に近づいているという時間的な問題もあったが、それよりも彼の目の穏やかさの中にも、「これがおれの人生さ」ともう誰にも何も言わせないという凛とした雰囲気を感じ取れたからだ。

私の家の前につき、彼は「ま、英語は君にとって第一外国語じゃないし。俺だって日本語をしゃべろなんて言われたら、落ち込むよ。リラックスして、できる限りのことをすればいいじゃないか。」と私を励ました。

チップを渡し、がんばってねとお互いに言い合い、リモのエディーはまた色鮮やかな眠らない街へと戻っていった。

一段と寒さが身にしみる夜だった。
by agua_de_marco | 2005-01-02 21:47 | 宛先はNY

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