レーズンサンドというのをご存知だろうか。
サブレ生地の間にラムレーズンとクリームが挟まったクッキーである。
私はこれがムショーに好きだ。
きっかけは、大学生時代に頻繁に携帯電話にかかってきた、「切迫早産しかかってるから、どこにもいけないのぅ。何か買ってきてぇ~」という姉からのリクエスト。
大体はどこどこのパンだの、デパ地下グルメだのご指定があったのだが、レーズンサンドもそのリクエストの一つたった。
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横浜かをり
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鎌倉レザンジュ
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さつき
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六花亭のマルセイバターサンド
などなど買いに走ったっけ。うーん、思わず過去を思い出してしまう。
よく買っていたのが、
目黒小川軒のレイズンウィッチ。
小川軒は一言で言えば、「老舗高級洋食店」。今ではのれんわけとして、代官山や御茶ノ水にもあるのだが、それぞれ味が若干異なっているのが特徴的だ。
姉とはことごとく好みのテイストが異なるのだが、このレーズンサンドの食べ方に関しては「
冷凍庫で凍らせてから食べるべし!」という共通見解を持っていた。
凍らせたレーズンサンドは柔らかいクリームがほんの少し固まっていて、口の中に入れるとヒヤッとする。少しずつゆっくりと口の中で溶けていくにしたがい、ラム酒の香りも口の中に広がり始める。
199×年8月初旬。
暑い日に窓を開け放ち、遠くで聞こえる小学生のにぎやかな声を聞きながら、キッチンで姉と向かい合いながら、紅茶と共にレーズンサンドを食べていたあの日。
9月が出産予定日だった姉のお腹もかなり目立ち始め、だんだんと私の知っている「姉の顔」から「母の顔」へと変わりつつあった。姉が結婚するときには「お姉ちゃんじゃなくなっちゃう」と、寂しさでぴーぴー泣いたものだった。しかし子供が産まれるという変化を迎える今回は、ただひたすら無事で産まれてくれます様にと願うばかり。
姉も不安感でいっぱいだったろう。だがこの午後のお茶の時間は、「こんなにグルメなものを食べていたら、これから生まれてくる子供は絶対グルメだね」と笑いながら過ごす幸せなひとときだった。
そして、デパ地下へランチを買いに行った今日。代官山小川軒のレイズンウィッチを限定発売しているのを見かけた。懐かしさを感じた私は即座に買ってしまった。
しかも
1箱=10個入りである。
炭水化物抜きじゃなかったっけ?という声がどこかから聞こえてきたのは無視するのがお約束。家についたら冷凍庫に投げ入れ、のちほどのお楽しみにするつもりである(ぷぷぷ)。