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世界報道写真展2005

正しい写真の見方があるのかどうかわからないのだが、わたしにとって優れた写真というのは、「見てストーリーが浮かび上がるか否か」という言葉につきる。

写真に映っている一瞬に至るまでの背景。それは何時間か何日間かという短い時間の場合もあるし、何十年か、何百年かという大きな時代の流れのときもある。そしてこの切り取られた一瞬のあとの事柄。これからどうなるんだろうか、どうしていくのだろうか、ということを想像していく。時にはそれはほほえましいものもあれば、残酷なことがあることも当たり前。そして自分の無力感やちっぽけさを改めて認識してしまうこともある。それを一瞬にして伝える。優れた写真はそんな力を持っているんじゃないかとずっと思っている。

6月18日より、恵比寿にある東京都写真美術館にて開催されている世界報道写真展2005に行ってきた。

毎年、世界中のプロカメラマンを対象にして開催される「世界報道写真コンテスト」。48回目を迎える今年、大賞作品となったのは、昨年末スマトラ沖を襲った地震による津波で親族を亡くし、悲しみあふれる女性の姿。
世界報道写真展2005_c0019396_1443428.jpg
アルコ・ダッタ (インド、ロイター)
「スマトラ沖地震による津波で親族を亡くし嘆き悲しむ女性」(C) Arko Datta


PC画面上とは違って大きなパネルでみる写真は、完全に言葉を失わせるもの。
死斑が体に現れ、うじが沸いている体。そんな親族を目にした彼女は、やり場のない怒り悲しみをでこぶしを握り締めるも大地を握りつぶすこともできず、大地の表面をかくことしかできない。今までの彼女と親族の関係。そしてこれから彼女はどう生きていくのか。つらい現実を受け入れながらも生きていかねばならない彼女に対しての想像が次々と働き、動くことはできない。

ほかにロシア・北オセチアのべスラン小学校包囲テロやブッシュ・アメリカ大統領の再選、イラク戦争など世界各地の現状を表した作品が選ばれて展示されていたが、私が一気に涙が放出されてしまったのは南アフリカ共和国のDV女性保護センターの写真。南アフリカ共和国では家庭内暴力が蔓延しており、女性 6 人に 1 人が被害にあっているという説もある。そのために家庭内暴力から逃げる女性を守るシェルターがあるのだが、そのシェルターで診察を待つ待合室の写真があった。

6つの個別ベンチの壁は白もしくは灰色なのだろうが、多分座ったら頭が当たるであろう部分の壁が黒くなっており、ベンチによっては壁がはがれたり、穴が開いているものまである。色が変わるほど多くの女性がこのベンチ椅子で診察を待った。穴が開いてしまうほど壁にもたれかかっていた。彼女たちは何を思ってその場にいたのだろうか。自分の無力感、絶望、恐怖、恐怖から逃れた安堵感、また再び恐怖に出会う不安。それらを想像していたら涙が止まらなくなり、目の前がくらくらしてきた。

「一瞬」のパンチ力がこんなに強いものであることを再認識させるこの報道写真展2005は7月31日まで開催されている。残りわずかだが、機会があったら是非いってみてほしい。私は来年も行ってみたいと思う。


世界報道写真展2005(サイトはこちら
■会 期 : 2005年6月18日(土)~7月31日(日)
■休館日 : 毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)但し、7/25は開館
■会 場 :東京都写真美術館 2階展示室
■料 金 : 一般 700円/学生 600円/中高生・65歳以上 400円

by agua_de_marco | 2005-07-25 14:06 | 宛先はニュースなネタ

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